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プロレスと人生と

ここ最近のプロレス人気復調は、ファンとして本当に嬉しい。今年に入ってからは(結果深夜放送になったけど)ゴールデンタイムでプロレス総選挙の放送があったり、こちらは深夜ながらAKB48出演でドラマ「豆腐プロレス」が2クールで放送されたりと話題が多い(しかも豆腐プロレス、試合シーンはかなり本格的だしやはり花がある。個人的にはユンボ島田が物凄くいい。本当にデビューしてほしい位だ)。

 

それでもまだ全盛期に比べると、まだまだなのも事実。まあ、力道山から猪木馬場の時代までは、熱狂的という言葉では足りないくらいの熱量だったから、そこを目指すと言っても…と、普通に考えれば諦めるだろう。

でも、今のプロレスラーや関係者は諦めていない。実際にもっと上のレベルを目指しているのだ。あの、街灯プロレスにとんでもない人だかりができた時代や、20時に放送があった時代を超えて、さらに上に行こうとしてるのだ。

ファンもそれを信じ、熱狂し、追いかけていく。その熱狂が新たな渦を作り出していく。

 

それでもプロレスに対する風当たりはまだまだ強い。八百長とか台本通りとかはどこでもみられる批判だし(あまりに言われ過ぎてて逆に他にないのか?と思ってる)、職業として成り立ちにくいのも原因の1つだと思う。何せ日本ではライセンスが無いから、宣言すればプロレスラーなのだ。

 

確かに筋書きはあるし、流れもあるだろう。裁判でも証言されてる位だし、アメリカのWWEは上場の際に公に認めている。

 

しかし、それがなんだろう?それを言ったら「ドラマで感動するなんておかしい。台本通りだしw」「ディズニーランドのぬいぐるみだって人が入っている。それを皆んな分かってて言わないだけで、幻想に浸っている。

これもプロレスと同じなのだ。大切なのは「今この瞬間を楽しめるかどうか」じゃないのだろうか。

 

そしてプロレスの大きな魅力の一つが、「生き様をそのまま見せる」ということだ。

プロレスほど感情を出して戦うスポーツはないだろう。他の格闘技(便宜上いろんなものを格闘技として説明します)では、相手に礼を尽くして戦うのがマナーとされる。柔道や相撲をみれば一目瞭然だ。

逆にプロレスは感情を表に出す。と、いうか感情のぶつかり合いこそがプロレスだと思う。

 

2016年12月17日、新日本プロレスの年内最終戦で行われたカード、「中西学vs永田裕志」がある。

「野人」と言われる中西学はテレビに出たりして、真面目にとぼけた回答をして人気になった。しかし2011年に試合中の事故で「中心性脊髄損傷」を負ってしまい、プロレスどころか全身麻痺になって一生寝たきりになると言われたほどだ。しかし懸命なリハビリに勤め、約500日後に復帰を果たした。

 だが年齢的なものも重なったのかもしれないが、やはり負傷前の動きにはなかなか戻らず、スピードが足りない、と感じることも多々あった。

そんな中西が、あの頃の自分を取り戻したいと盟友である永田にシングルマッチを要求したのだ。そもそも復帰以降のシングルマッチは3年以上無く、これを含めて3回目。それだけ本調子には遠いのだろう。しかし永田はそれを分かっていて、それでも「やるからには最高のコンディションで来てください」という条件のもとに対戦を受けた。

 

両者とも一歩も引かず、全力で攻撃と意地をぶつけ合つた。今主流の華麗なプロレスとは一線を画した試合は果たして物凄い盛り上がりを見せた。エルボーと逆水平チョップをぶつけ合い、胸は真っ赤になりながらも永田の蹴りを受け止める。

テクニックのよりも感情が表面に出たこの試合は、結果的には負けてしまったが中西学というレスラーを再評価するに相応しい試合だった。

今年に入り、中西学は若手とだがシングルマッチを行い、見事に勝利を収めている。

 

DDTという団体が作成した「プロレスキャノンボール2014」という映画がある。

 4チームに分かれたレスラーが東京から東北岩手を2泊3日で目指し、その最中に自らブッキングした(現役、元問わず)レスラーと試合を行いポイントポイントを競い合うという、いかにもDDTらしい企画だ。

参加したチームの中に、「ガンバレ⭐️プロレスチーム」がある。実は無理やり参加したためこのチームにかぎり自費参加というハンデを背負っていた。

このチームの大家健というレスラーは、実はかなりの落ちこぼれレスラー(自分より素晴らしい人に対して非常に失礼な表現だが)で、大切な時に何度も逃げ出してしまっていた。

だが、初日の夜各チームの試合模様を全員で見おわった後に徹底的にダメ出しされた。たった2人のガンバレチームは、逃げ場のないところに追い詰められたのだ。

その後、大家ともう1人のメンバー今成は、文字通り裸になって、張り合いながらお互いの想いをぶつけ合い、号泣する。まるで現実世界から剥離した光景を見ていた1人は「夢でも見てるんですかね」と呟いた。

最終的にゴールであるみちのくプロレス道場についた参加者全員は、(当時まだ復興が進んでなかったのもあり)復興の一環もあり、最終的に東北で無料興行を行うという事を決めた。

そのプロデュースを任されたのが大家だった。遅れてゴールして、急に「興行の準備を任せるからやれ」と言われ、鈴木みのるに「やれんのか」とけしかけられたが「やりますよ!」と力強く返す大家は、そのまま一月大船渡市に残り、「プロレスキャノンボール興行」が行われた。

本当に大家は必死に色々走り回ったのだろう、この時には表情がまるで別人になっていた。1150人もの観客を集めたこの興行は大成功で、試合後に大家は叫んだ。「大船渡は元気です!」と。

被災地を元気付けたいと言う事で開催されたこの興行は、結果的にレスラー、中でも大家健と言うレスラーを一皮も二皮も剥けさせた。

 

長くなってしまったが、この春楽しみな試合が2試合がある。

 

一つは新日本プロレスIWGPタイトルマッチである、王者オカダカズチカ対挑戦者柴田勝頼だ。

春の大会ニュージャパンカップに優勝し、3つあるタイトルのどれかに挑戦する権利を会得した柴田は、リング上で「約束がある」とオカダへの挑戦を表明した。3年前にオカダへ挑戦しようとした時に「せめてNJCに優勝してから来い」とあっさり袖にされたのだ(この場面は無料で公開されいるので是非見て欲しい)。思えばこの2人のシングルマッチは一度しか無く、柴田はあえてオカダについて話しもしなかった。この時の屈辱を柴田は3年間秘めてきたのだ。

その想いが遂に4・9にぶつかり合うのだ。

 

もう一つは女子プロレスで、3・26に行われるアイスリボンでの試合である藤本つかさ中島安里紗

この2人、もともとベストフレンズという団体の枠を超えた女子プロレスの歴史中でも屈指の名タッグチームだった。それが去年中島がJWPを退団し疎遠になった。その後に中島が、憧れの選手である高橋奈七永が在籍するSEAdLINNNGに所属し、疎遠になってしまったその絆が完全に切れた。

藤本曰く、「只の高橋信者になってしまった今の安里紗に魅力がない」「側にいて欲しくない」「言葉まで失ってしまった」「ベストフレンズはもう心置き無く解散できる」と、完全に否定して止まない。こういう感情のぶつかり合いは実は女子プロレスの方が激しく、容赦が無い。アイスリボンという団体は、幸せになるプロレスがモットーなのだが今回は初めてどういう結末になるか分からないというくらいの遺恨マッチになっているのだ。

 

この二つは兎に角感情がぶつかる試合になるだろう。結末がどうなるか予測がつかないが、それがまた楽しみである。そして試合の後にどの様な結末が待つのか。

 

プロレスほど感情を表に出す競技は無い。そしてそれは今の日本に必要な事では無いだろうか。