「マチ工場のオンナ」を見て思った事~リーマンショックから10年
年末にNHKで放送していたドラマ「マチ工場のオンナ」を見させていただきました。
こちらはダイヤ精機の社長である諏訪貴子さんの著書「町工場の娘」を原作としており、当然脚色はあるのですが、主要なエピソードはきちんと放送されており、丁寧に作られたドラマで面白かったです。
ストーリーなどはこちらの本かNHK公式サイトを見ていただくとして、この中でようやく経営が持ち直してきた所にリーマンショックが発生したエピソードがあります。
この時、当然不況に陥り銀行から返済を執拗に催促され、社員の出向や給料カット(こちらは社員からお願いしてカットしたとの事)などでしのいできましたが、銀行の対応は「とにかくある金は給料ではなくて返済しろ」との事。
会社がつぶれても返済しろという事でした。
最終的にはぎりぎりのところで新たな仕事が入り、何とか建て直して行けたのですが、この状況を見て思いました。
それはおそらくこのリーマンショック後の対応が、今の日本の製造業の方向性を完全に決めてしまったんだろうな、という事。
ドラマの中でも大手から取引停止を申し渡され、廃業を決意する会社がありましたが、当時は本当に廃業をする会社が多かったと記憶しています。
技術の高い町工場が無くなるという事は当然職人の働く場所はなくなるわけですよ。
そうなると技術の海外流出(海外企業から引き抜かれた職人も多かった)や、技術の継承も行われる事が無くなってしまいました。
リーマンショック前から正社員雇用の控えなどは起こってましたけど、社員から見れば「雇用を控えるものすごく都合のいいいい訳」が発生したわけです。
私も工場に勤めておりますが、考えればこの辺から社員の雇用や賃上げがされてません。
ドラマをみて思い出したのですがリーマンショック発生が2008年。約10年前なので、そこから日本の製造業はどんどん弱っていったと言って間違いないでしょう。
その結果、「メイド・イン・ジャパン」の称号の価値は駄々下がりになってしまった。
今、きちんと業績を上げられている企業は、この時に守るばかりではなくきちんと攻めていた企業だという印象です。
ダイヤ精機は、会社の強みはどこにも負けない技術だ、という事で諏訪社長になってから若手の育成や技術の継承を計画を立てて行っているそうです。
(そもそもリーマンショックを切り抜けられたのも「高い技術」があったからとの事)
ここから技術を高めていき、かつてのように「メイド・イン・ジャパン」が輝きを取り戻せるようになるには非常に困難でしょう。
今までのように定年制や社員雇用を躊躇していては先細るだけだし、何より生産人口が激減していくので頭数が足りなくなるわけです。
私は経営層ではないのでどうしても声を上げる事しかできないんですが、どうも煙たがれているようだし。そうなるともういいのかな?と思ってしまいますが…
諏訪貴子さんの著書。お勧めです。